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【感想】ウルトラセブン 第45話「円盤が来た」

2月になりましたね。ARAIです。

立春も過ぎてしまいましたが、季節はまだまだ冬真っ盛り。冷え込む日曜の朝は、真紅なる怪奇のお話を楽しむとしましょう。

 

それでは今日もいきます。「セブン4K」第45話です。

 

ウルトラセブン 第45話「円盤が来た」

「セブン」を彩る名編の一つ ~大胆で異色で不思議なエピソード~

これはまた、ずいぶんと大胆なお話を持って来てたんだなぁというのが第一印象でした。お話の展開や構成が大胆ということなのではなくて、なんというか、お話そのもの、そう、このお話すべてが、言ってしまえばかなり大胆というか…。

今の生活に、今の社会に、今の自分に、今の地球に、どこか満たされない「何か」を感じ、胸に空っぽの「何か」を抱えたまま生きる青年・フクシン。住まいがあり、職があり、夢中になれる趣味がある。それなのに、彼はどこか空っぽで、どこか浮いていて、どこか遠くを見ている。

繰り返す日々。代り映えのない日常。見上げれば広がる無限のロマン。しかし自分は決して、そのロマンにたどり着くことができない。届くことのない憧れの感情は、現実に戻ればただただ虚しいだけ。

こんなにも生々しくて、深みのあるバックボーンを持つ市井のゲストが中心となって展開されていく。それが今回のお話。

 

いやはや、令和となった2022年の今改めて見ても充分に遜色ないというか。むしろ、凡そ生き辛い世の中になったと言われて久しい今でこそ、この手のお話が「効く」と言いますか…。1968年の時点でこの手のお話が存在しているという事実が、個人的にはかなり興味深いところです。

まあもっとも、遡ればもっと以前から存在している類のモノなのかもしれませんけど。

さりとて「セブン」が制作・放送当時の時代背景を如実に示唆したエピソードが多いという点を踏まえるならば、今回のお話を見て感じることというのは、そのままそれが当時の時代に対して自分が抱く感情となりえるのやもしれません。

そしてその感情が、現代であってもなお古臭いものだと唾棄してしまえないような、今の時代には合わないよと笑い飛ばすこともできないような…、未だ人々の心のどこかに存在している…ように思えるんですよね、私は。

 

また幾数年、年を重ねた後に今回のお話を見るとまた違った感情を抱くことになりそうです。

 

かなり話が逸れてしまいましたね。本題に戻りましょう。

 

いずれにしても、今回のお話はフクシンという市井の人物が中心となって展開されていきます。ウルトラ警備隊はどっちかって言えば脇。

そういう意味では、河童クラブの人たちが狂言回し的な役割で据えられた第41話に近いのかもという印象も受けますが、個人的には「地球に嫌気がさしている」ゲストが登場するという点で、第29話の方をより強く連想させられましたかね。もっとも、一の宮とフクシンとではキャラもバックボーンも違い過ぎますし、何より第29話ではお話の中心はウルトラ警備隊やダンにありました。

しかし今回のお話の主役はフクシンです。あたまからおしりまで、シナリオのメインとしてフクシンが据えられている。

彼の日常、生活、生き方から周囲の人々との関係性、心境まで、極めて丁寧かつ繊細に描いています。加えて、宇宙人は登場すれどセブンとの激しい戦闘もなく、ウルトラ警備隊によるライドメカの活躍もほとんど描かれていない。

 

これらの点をして、私は今回のお話を大胆だなと感じた次第なわけです。

放送当時のターゲット層である子どもたちからの反応はどうだったんでしょうか。少し気になります。

 

このように、内容としては、「ウルトラシリーズ」と言われて凡そ一般的に人々が思い浮かべるエピソードとは大きく異なるわけですが、私個人としては大変楽しむことができました。

「セブン」には、見た後になんとも不思議な余韻を与えてくれるお話が多々あるのですが、今回もその一つですね。そして、そんな今回のお話を担当されていたのがまたしても実相寺監督であるという点は決して無視できないポイントでもあるでしょう。

「怪奇」や「奇妙」、「緊迫」といった要素で画面にくぎ付けにされる第8話第43話も良いですが、今回のような雰囲気も実に良いですね。今回は「SF」というよりは、さながら「ファンタジー」とでも言うべきか…、いえ、あるいは本編で「オオカミ少年」の例が出てきたように、「童話」的な要素もあるのやもしれません。

「童話」や「おとぎ話」といった類には、「不思議な出来事」や「不思議な人」が付き物なわけですから、それが今回で言う「見たハズの円盤群が確認されないこと」であったり、「妙に聡明な少年=ペロリンガ星人」であったりするわけですね。そして「不思議」というのは翻って「怪奇」や「奇妙」と紙一重

そう考えていくと、趣向は違えど今回のお話もなるほど「セブン」に相応しい、似付かわしいエピソードと言えますね。他のエピソードと比べると、ずいぶん大胆で、異色なようにも思えますが、それらもひっくるめて、「セブン」というわけですか。

 

最終回が近づいて来た今、改めてこの作品の素晴らしさを垣間見ることができたような気がします。名作というのは、時代なんてものを簡単に越えていくのですね。

 

星から来た少年 ~サイケ宇宙人~

登場したのはサイケ宇宙人ペロリンガ星人。「ベ」ロリンガではなく「ペ」ロリンガです。ここ大事。

 

凄まじい数の円盤群を星にカモフラージュし、天文台や観測所からは見えないようにしつつ、アマチュア観測者には見えるようにすることで、童話の「オオカミ少年」のような事態を引き起こし、そのスキに地球を侵略しようと画策していた宇宙人です。

その計画の内容から、相当な知識と技術、学習性を持っていることがわかりますね。

また、人間(少年)への擬態(変身?)に、人語を理解し、人間生活にも適応しているらしいその柔軟性から、完全に工作員タイプの宇宙人であるとも言えます。

 

しかし一方で、フクシンに親しげに会話をして同胞として迎えようとしたり、「なるだけ穏やかに事を運びたい」と主張したりと、地球を侵略しに来た割には、なんというか、一概に「悪」と断ずることはできないというか…、なんとなく話せば分かり合えそうな気がするというか…、その特徴的な声と、サイケデリックな見た目と併せて、どこか憎めない存在なんですよね。というか、個人的にはけっこう好きなヤツです。

 

フクシンに自身の正体と目的を明かした後、ウルトラ警備隊にその存在を察知され、交戦。

宇宙空間にて、円盤群はホーク1号と、登場した個体はセブンと、それぞれ激戦を繰り広げますが、あえなく敗北し、爆散します。作中の描写から、おそらく生き残ってはいないものと思われます。

 

ところで、ペガッサ星雲の出身とのことでしたが、ペガッサ星人とは何か関係があるんでしょうかね。

 

ちなみに、今回のお話の後日談的エピソードとして「タイガ」第6話「円盤が来ない」があります。

同エピソードの内容的に、「セブン」第8話と「マックス」第24話「狙われない街」との関係性と違って、今回のお話の中でマルチバース分岐点が発生して「タイガ」第6話に繋がる…、というよりは、今回のお話と似たような出来事が「タイガ」世界でも過去にあった、とするのが自然かなと思っています。

つまり、今回のペロリンガ星人と、「タイガ」第6話での「星に帰りたい男」はまったくの別人であると。

 

しかしながら、今回のお話を見た後に「タイガ」第6話を改めて見ると、また色々と発見がありそうですね。

 

 

無駄な働きと地球平和 ~ウルトラ警備隊の意識~

上述の通り、今回のウルトラ警備隊は脇に回っている印象です。

なので、基本的には活躍らしい活躍はあまりなかったりするんですが、随所に垣間見える各隊員の言動はけっこう注目ポイントかなと思っています。

 

序盤、当直係か、面倒臭そうに電話に出ながらも、市民と話をする時は感じが良くなるソガ隊員に、パジャマ姿で通報を相手にしないフルハシ隊員、いつも通り案件には真摯に取り組むダンなど、細かな所作や台詞のトーンなど、注目してみるとけっこう面白いです。

また、キリヤマ隊長による「我々が無駄な働きをすればするほど地球は平和ということ」という台詞は、彼のウルトラ警備隊としての姿勢と意識を端的に表した名台詞と言えるでしょう。第39話でも、似たようなニュアンスの台詞がありましたし、キリヤマ隊長の基本スタンスは、やはりこうなのでしょう。

それよりもフルハシ隊員がそろそろいい加減学習した方が良いような気もしますが…。

 

本編でのその後の展開を見るに、おそらくはダンと、仲の良いソガ隊員辺りが中心となって調査を続けていたと思われます。それが、あの通報の録音と、画像の解析に繋がったと。

 

その後、パトロールとしてホーク1号を駆り、円盤群と接触。セブンと連携し、見事円盤群を撃滅せします。…が、今回の宇宙空間での戦いは、演出上かなりボカされているというか、イメージ映像のような雰囲気が強いためあまりしっかりとホーク1号の活躍が拝めるわけではありません。

 

まあ今回のお話の性質上、仕方のないことかもしれませんね。個人的にはそこまで気にはなりませんでした。

 

星からの使者との戦い ~閃光と鮮紅~

今回の戦闘パートは上述の通り、かなりイメージ映像に近いような仕上がりになっています。たまにはこういうのも良いもんだ。

 

円盤群から出現したペロリンガ星人の個体とセブンが交戦。宇宙での空中戦を連想させる幻想的な演出の中、閃光と鮮紅が交差します。

 

作中の終盤での描写を見るに、戦闘パートラスト辺りの大きな爆発にて、ペロリンガ星人がセブンにより撃破されたものと思われます。それとほぼ同時に、ホーク1号による円盤群の殲滅も完了した感じでしょうか。

 

戦闘パートとしては、まあ物足りないと言えば物足りないものだったかもしれませんが、今回のお話全体で考えると、総じて良い仕上がりだったように思えますね。

 

その他 ~次回に向けて~

そしてお次は満を持して「ヤツ」の登場です。なんだか、いよいよ本当に終わりが見えてきたなぁという感じがしないでもないですね。

この「セブン4K」全話視聴という長きにわたる追体験の旅が終わることを思うと、やはり寂しさのようなものもこみ上げてくるものですが…。しかしまあ、色々と浸るのは終わってからにするとしましょう。まだあと4話もあるわけですしね。

 

次回は第46話「ダン対セブンの決闘」です。

 

それではまた。

 

 

円盤が来た

円盤が来た

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