3月ももう下旬に差し掛かっていますね。ARAIです。
しかしまあ、ついこの間3月になったばかりだと思っていましたが、もう20日ですか。早すぎますよ本当に…。
「1月は行く」「2月は逃げる」「3月は去る」だなんて、ホント、よく言ったもんだなと毎年感じますね。年を重ねていくごとに。
さて、前回予告させていただいた通り、今週からは「ウルトラQ」の感想を始めていきたいと思います。
それでは張り切っていきましょう。「ウルトラQ 4K」第1話です。
ウルトラQ 第1話「ゴメスを倒せ!」
アンバランスの幕開け
さあ、始まりました「ウルトラQ」。
言わずもがな、かの「ウルトラシリーズ」記念すべき第1作目にして、世に「怪獣ブーム」を巻き起こした最初の特撮TV番組です。
放送されたのは1966年。今から56年も前になりますか。
この作品が、日本の特撮史上において極めて重要かつ偉大な作品であるということは、もはや私ごときが言うまでもないことでしょうね。
さて、そんな「ウルトラQ」がもたらすアンバランスな世界。
不思議と恐怖が漂う未知なる世界。
今回からじっくりと、またのんびりと、腰を据えて、楽しませもらうとしましょう。
二大怪獣激突!
記念すべき最初のアンバランスは、二大怪獣の激突。
ある意味ではシンプルに「怪獣モノ」と括ってしまえそうな内容となっていましたね。
モノクロ作品といえど、4Kリマスターされた画質の美しさと相まって、迫りくる怪獣ゴメスの迫力と緊迫感は圧巻の一言。特に、冒頭ナレーション直後、暗闇からギョロリとゴメスの目が映し出されるシーンには息を呑みましたよ。
やや不気味にも聴こえるお馴染みのオープニングは、専用映像ではなく、本編映像をバックに流れました。
少しずつ、少しずつ、部位を変え、視点を変え、ゴメスを映しながら展開されるスタッフクレジットはもはや芸術の域ですね。トンネル内の流れ落ちる砂岩、踏みしめるゴメスの足とその皮膚の質感。
アンバランスな世界に足を踏み入れたことを、目で、耳で感じることができる最高のオープニングに仕上がっています。
お話の内容としては、良い意味でシンプルで、わかりやすい印象。
謎に満ちた怪奇事件というわけでもなく、ゾッとする奇妙さがあるわけでもなく、それらが解き明かされるカタルシスがあるわけでもなく。
しかしながら、洞窟という閉ざされた空間の中で、人間よりも大きな怪獣から逃げ、隠れ、あてもなく出口を探すという展開は、さながらパニック・サスペンスのよう。
同時並行で描かれるジローという少年の物語と合わせ、どこか画面にくぎ付けにさせられるというか、世界観に引き込まれるというか、そういった不思議な感覚に陥ったのは、演出の妙だけではない筈。
お話の大筋自体は「怪獣モノ」というシンプルなものでありながら、その中身は、登場人物のキャラクター性や怪獣の特性、動作、諸々の演出、その一つ一つが非常に細やかに仕上げられていると感じました。
シンプルな外見の容器をパカッと開けると、複雑で細かな中身が詰まっていたような。緻密で繊細な中身だけれども、それでいてそれらすべてが絶妙なバランスで保たれていて、どこか美しいと感じるような。そんな感覚でしたね。
そして今回のお話の目玉はやはり、何と言ってもゴメスとリトラの二大怪獣激突に尽きるでしょう。
56年もの前の作品ゆえ、演出に時代を感じる場面ももちろんありはしますが、今見ても充分に楽しめる内容になっていました。
出し惜しみなく迫力たっぷりに描かれる二大怪獣の激突は必見。
個人的にはゴメスの尻尾の動きと、それに伴い破壊される第三工区のシーンが好きですね。ゴメスの動きはゆっくりでありながら迫力があって、破壊される第三工区はダイナミックでありながら細やかさもあってと、見ていて一番ワクワクしたシーンでした。
あとリトラの翼をバサバサと羽ばたかせるカットを随所に挿入した演出は見事でしたね。
どうしても操演であることがわかるような、ともすれば緩慢となってしまいがちなリトラの飛行シーンでしたが、あのカットがあるだけでしっかりとしたスピード感が伝わりました。特撮的にもメリハリがついたというか、テンポが生まれたというか。
CG技術が発展していなかった時代においても、見せ方一つで迫力のあるシーンが撮れるのだなぁと、改めて感服しました。
アンバランスゾーンの住人たち
第1話という段階なので、正直、今のところ各登場人物たちをしっかりと把握ができていない状況ではありますね。
メインどころを中心に、それぞれ個人的な印象を書き連ねていきましょうか。
万城目 淳
本作の主人公の一人ですかね。後述の由利子とは「淳ちゃん」「由利ちゃん」と呼び合う仲のようです。
ゴメスから逃れるべく洞窟の中を進んでいた際、「元気を出して」「大丈夫」「頑張って」などと由利子を頻繁に励まし、彼女の体調や身の安全を第一に考えている言動が非常に印象的でした。怪獣に追われ、脱出できるかもわからない洞窟という閉所において、パニックにもならず他者を慮ることができる辺り、第1話時点でさっそく彼の人柄やキャラクターがわかるようになっています。夫婦や恋人という関係性であっても、なかなかできることじゃあありません。大した男です。
江戸川 由利子
淳と並び、本作の主人公の一人。今回のお話時点では、まだそこまで男勝りであるという側面は描かれていません。
ただ、淳と共に洞窟へ赴く辺り、人一倍行動力はある様子。また、ゴメスから逃げる途中も、疲労した様子こそ見せていましたが、たしか弱音らしい弱音は一言も吐きませんでしたね。芯の強い女性なのでしょう。
リトラの覚醒後は、激突する二大怪獣を見守るポジションでしたが、いち早く我に返ったのか、きちんと手持ちのカメラで撮影をしているシーンが描かれていました。
戸川 一平
淳、由利子と並び、本作の主人公の一人。そのルックスと言動から、一発で三枚目のムードメーカーであることがわかるキャラクターになっていますね。個人的には好きなポジション。
ジロー少年の話を信じ、彼(と新田)と共に、淳&由利子組とは別の視点から今回のお話をたどる立ち位置となりました。ドジなんだろうけど、いいヤツなんだろうなという掴みがバッチリです。
ジロー
今回のキーパーソン。どこで覚えたんだとツッコミたくなるような口調で話します。
少年でありながら古生物学に造詣が深く、子どもならではな無邪気で自由な発想から、学者たちもお手上げな今回の事件を解決に導きました。
普段からあれやこれやと色々な、本当に色々なことを、古生物やその他学問に絡めて理屈付けて説明し(ようとし)ているのでしょう。そしてそれらはおそらく、大半が見当違いであり、あるいは眉唾ものの理屈だったのではないかと。周囲の大人たちの反応からも、それは見て取れます。
しかしながら、アンバランスゾーンへの扉が開いた今回においては、その知識と発想力がものを言いました。周囲の大人たちからの目線は、今回の一件を経てもなお、おそらくそこまで変わることはないだろうとは思われますが、彼にとっては良くも悪くも、かけがえのない経験になったに違いないでしょう。
新田
ゲストその1。由利子の同業他社に当たる記者さんです。
嫌味な感じがなく、ジロー少年の話を信じていたのが好印象でした。
係長
ゲストその2。第三工区の責任者で、中村さんというらしいです。
いわゆる「子どもの言うことを信じない嫌な大人」ポジションのキャラなんですが、洞窟に閉じ込められた淳たちの救出に尽力したり、現れたゴメスを前にジロー少年を避難させたりと、ちゃんと「立派な大人」やってますね。個人的には好印象。
ジロー少年に対しては良い印象を持っていなかったようですが、やはり一人の大人として、なんだかんだで日頃からそれなりにかわいがってはいたのでしょう。
古代と原始より目覚めし者たち
古代怪獣 ゴメス
ウルトラ怪獣第0号とも呼ぶべき今回の怪獣。近年では「ニュージェネレーションヒーローズ」での活躍も目覚ましいですね。もはやレジェンド怪獣枠。
体長は10mと、シリーズ的には小型に分類される怪獣ですが、さりとて巨大とは言えないにしても、人間としては凄まじい脅威に違いはありません。
鋭い爪に頭部の角、長く太い尻尾に頑強な皮膚、さらには背中には甲羅のような器官を持ち、シンプルなデザインでありながらも怪獣としての武器を一通り兼ね備えています。
地中温度の上昇を原因に長きにわたる眠りから目覚め、第三工区を舞台に大暴れを見せててくれます。
洞窟内で淳と由利子を追いかけ回した後、地上に現れリトラと対決。
怪獣としてのそのステータスから戦いを優位に運びますが、リトラの嘴で右目を衝かれ形勢逆転。シトロネラアシッドを複数回受け、死亡しました。
絶命する際の尻尾の操演がお見事!
原始怪鳥 リトラ
今や「大怪獣バトル」シリーズでお馴染みの鳥型怪獣です。鳳凰を思わせる美しい姿をした怪獣で、全長は2mとゴメスよりもさらに小柄。
蛹の状態で眠っていたところ、ジロー少年の手により孵化されます。孵化直後はひな鳥さながらキョトンとした様子でしたが、ジロー少年の言葉を受けゴメスと対峙することとなりました。
体格差もあり、尻尾で殴打され牙で噛みつかれとかなり苦戦しますが、ゴメスの右目を嘴で衝くことで形勢逆転。トドメのシトロネラアシッドによる攻撃で見事、ゴメスに勝利します。
…が、その直後に死亡。諸刃の剣であるシトロネラアシッドにより、その命を落とすこととなったのでした。
次回に向けて
今回は「セブン4K」とはまた違った形式の感想にしてみました。引き続きこの形式でいくのか、それともまた変えるのかはまだわかりませんが、まあ探り探りやっていくこととしましょう。
次回は第2話「五郎とゴロー」です。
それではまた。